宅地建物取引士とは

多くの人にとって、一生の中で最も大きな取引は「不動産の売買」だろうと思います。年収の何倍もの金額を、何十年というローンを組んで購入することも少なくありません。
土地利用や建築については複雑な法規制があるため、きちんと調べないままに購入してしまうと、希望する建物が建てられないといった事態に陥ってしまう危険性があります。とはいえ、一般人にとってはそのような法規制を漏れなく調査することは困難です。
宅地建物取引士とは、不動産業者(宅地建物取引業者)に置かれた不動産のプロフェッショナルであり、顧客のために不動産及び取引について調査・説明を行う責務を負っています。

取引主任者から取引士へ

従来の宅地建物取引主任者という名称を「宅地建物取引士」という名称に変更する宅地建物取引業法の改正法が平成26年6月25日に公布され、平成27年4月1日に施行されました。
宅地建物取引業(不動産業)は、公共性が極めて高く、消費者からの高い信頼の上に成り立つ産業です。このため、コンプライアンスの徹底と信頼性の向上に努める必要があり、このような要請は今後更に強まっていくと考えられています。
とりわけ、宅地建物取引業の中核を担う宅地建物取引士には、コンプライアンスを重視した業務執行と、高度化・多様化する消費者ニーズや社会状況に対応した知識・能力の習得が求められています。
このような背景を踏まえ、今回の宅地建物取引業法の改正では、宅地建物取引士の業務処理の原則を定めるとともに、宅地建物取引士が信用・品位を害するような行為を禁止し、さらに宅地建物取引士に対して「必要な知識および能力の向上に努めなければならない」という文言も新たに追加されました。

★宅地建物取引士の業務処理の原則(第15条)

宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。

★信用失墜行為の禁止(第15条の2)

宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

★知識及び能力の維持向上(第15条の3)

宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。

専任の宅地建物取引士の設置義務

宅地建物取引業者は、事務所等の規模、業務内容等に応じた数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならないとされています。

事務所(本店、支店) 宅地建物取引業に従事する者5名につき1名以上
案内所等 1名以上

専任の宅地建物取引士を「必ず」置かなければならないわけですから、宅地建物取引士の資格が就職・転職にプラスになることは間違いありません。
(もちろん、資格さえ取れば仕事ができるというものではありませんけれども…。)

宅地建物取引士しかできない仕事

宅地建物取引業者が行う業務の中には、宅地建物取引士にしか行うことができないものがあります。

★重要事項の説明・重要事項説明書面への記名押印(第35条)

宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者に対し、不動産取引(契約締結)の前に、買主・借主に対して一定の重要事項を宅地建物取引士に説明させることを義務付けています。
重要事項説明は、必ず書面を作成しなければならず、この書面(重要事項説明書)には説明を行う宅地建物取引士の記名押印をしなければなりません。
また、重要事項説明を行う際には、宅地建物取引士証を相手方に提示することも義務付けられています。

★37条書面(契約書)への記名押印(第37条)

宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者に対し、契約成立後に一定事項を記載した書面(37条書面:実務的には契約書をもって37条書面としていることが多い)を相手方等に交付することを義務付けています。
この37条書面についても、宅地建物取引士の記名押印が必要とされています。

宅地建物取引士になるためには

宅地建物取引士になるためのプロセスは以下のとおりです。

STEP1 宅地建物取引士資格試験に合格する

毎年1回行われる試験に合格する必要があります。

STEP2 宅地建物取引士資格登録

宅地建物取引士資格試験合格後、宅地建物取引士として業務に従事しようとする場合は、試験合格地の都道府県知事の登録を受ける必要があります。
宅地建物取引業の実務経験が2年以上ないと登録が受けられないというのが原則ですが、「登録実務講習」を修了することで実務経験の代わりとすることもできます。

STEP3 宅地建物取引士証の交付

宅地建物取引士資格登録完了後、都道府県知事に対して宅地建物取引士証の交付申請をすることができます。宅地建物取引士証の交付申請は任意(登録だけして交付を受けなくても良い)ですが、宅地建物取引士証の交付を受けていない者は宅地建物取引士としての業務(重要事項の説明、37条書面への記名押印)をすることはできません。
なお、試験合格後1年を経過している者が宅地建物取引士証の交付を申請する場合には、都道府県知事が指定した法定講習を受講する必要があります。

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